SONIC PORT VXとBELDEN(ベルデン)8412
先日から紹介しているBELDEN(ベルデン)の2芯ケーブル 8412とFURUTECH(フルテック)のプラグ FP703G で自作したセミバランス構造のギターケーブル(シールド)だが、BIAS & SONIC PORT VX を使用していて気になる事があったのでお伝えしようと思う。
まず使用環境についてだが、ストラト → BELDEN 8412 → SONIC PORT VX(オーディオインターフェイス)→ Mac または iOS 上のアンプシュミレーター BIAS → SONIC PORT VX → MOGAMI 2524 → ギターアンプ、という流れ。
出音の確認はギターアンプに繋いで実際にスピーカーから出力させる事が多いのだが、アンプ経由だとアンプやスピーカーの特性が少なからず音に影響を与えるので、BIAS の素のシミュレーションサウンドをモニターしたい時などは、アンプではなく SONIC PORT VX から直接イヤホンなどでモニタリングする事もある。
で、何が気になったかという点だが、簡単に表現すると「音が痛い」という事である。
判りやすく言うと、高域がきつく音質が硬くなるという感じを受ける。
誤解のない様に先に述べるが、これはあくまでも BELDEN 8412 自体の評価ではなく、上述した通りの環境における BELDEN 8412 を使用した際の感想であり、(はっきりとは検証していないが)ストラト自体も配線材あたりの影響で高域に特徴が出ている事も考えられる。
何れにせよ、BELDEN 8412 を使う様になってから「元気で解像度が高い太い音」というイメージで気に入っていたのだが、SONIC PORT VX とアンプシミュレータという組み合わせ(つまりUSBオーディオインターフェイスなどを経由しデジタル端末で音造りを行う環境)では妙にハイのきつさが目立ち、普通にアナログな機材でプレイする場合の音質に比べると、耳に痛い音の硬さを感じる。
そこで思ったのが「(ストラトも含めて)自分の使用条件において BELDEN 8412 の音質傾向が合っていないのでは?」という疑念だった。
SONIC PORT VX とアンプシミュレータ という環境ではそもそもハイファイ感が強くなる傾向なのだが、これに BELDEN 8412 の音像が加わることで結果的にアナログライクな温かみのある音を表現しにくいバランスになっているのではないかと考えた。
そこで検証の為に比較的フラットで癖の少ない音質である MOGAMI 2524 や CANARE GS-6 を用意し、ギターと SONIC PORT VX 間に使っている BELDEN 8412 と変更して音質の比較を行ったのだが、結果は思った通りとなった。
課題であった高域の強さが抑えられ、全体的にも少しおとなし目の音像となった事で音質も自然な感じを取り戻し、音作りもしやすくなった。
しかし、決してBELDEN 8412 が悪いという話ではなく、BELDEN 8412 自体の音質の魅力は捨てがたいのも事実。
普通にアンプ直で鳴らす様な本来のシンプルな接続環境においては何とも言えない魅力的な存在感を発揮してくれる事もある訳で、そう考えると今回の件はとても良い経験になった。
やはりケーブルは「適材適所」である。
ブランド性の強い高価なケーブル・・・
抜けが良く太い音のケーブル・・・
フラットで本来の音がするケーブル・・・
ギターケーブルも商売目的のものから品質本位のものまであらゆるものが存在し、またその特徴もネットや雑誌などで簡単に得る事が出来る。
しかしケーブルも含め、楽器の「音」を構成する機材の良し悪しは、「価格」や「評判」と比例しない事が多々あり、特にケーブルにおいては「良い」とされるものが自分の環境でも必ずしも良い音を出すとは限らない。
今回はそれを実感する事ができたのでラッキーである。
「太くハリがあり、色っぽいんだけど・・・音作りが難しく、結果的に理想の音が作れない。以前のもっと安いケーブルの方が違和感なく理想の音を作れていた・・・」
としたら、明らかに後者のケーブルが良いケーブルだと思う。
でもこれ、気がつけばまだ幸いで「このケーブルは著名な◯◯も使ってる」とか「◯万円もする奴だから」といった理由だけで「自分も良い音が出ている」と思っている人は、一度弾き比べする事をお勧めする。
ポイントは「理想の音」を意識して比べる事。
ドンシャリでハイファイな音とか、ピッキングの強さで音の柔らかさが変わるとか、自分の好みを出来る限り具体的に把握して聞き比べると判りやすい。
ボリューム全開時は気づかなかったが、クリーン、クランチ辺りの音になると思っていた音が出ない・・・とか色々あると思う。
「適材適所」の話に戻るけど、機材の組み合わせや電源環境、演奏環境なんかで音って変わるし、現場で音抜けが悪い時にケーブル変えたら改善した、なんて良く聞くしね。
結局、条件変わればベストな機材の組み合わせやセッティングも変わるって事だよね。
なんで、実際に自分で弾き比べてみて自分のケーブルの素性(音質、特徴)を何となくでもいいから把握しておく事ってとても大事で、状況に応じて適切な機材選定が出来る様になれると無駄なセッティングに時間やお金を掛けずに済むと思うよ。
最後に補足だけど、ハイインピーダンス信号(ギター直後の信号など)に比べてローインピーダンス化された信号(エフェクターを通った後など)は、後者の方がケーブルの音質の差の違いを感じにくいと思うので、ケーブルの質や長さを検討したり、音質の聴き比べを行う場合はこの辺りも考慮するといいかも。