BELDEN(ベルデン)8412とMOGAMI(モガミ)2524
以前自作したギターケーブル(シールド)のBELDEN(ベルデン)8412とMOGAMI(モガミ)2524について、使用感をレビューしようと思う。
まず、それぞれのケーブルの仕様は下記の通り。
- ケーブル:ベルデン8412、プラグ:フルテックFP703G(セミバランス構造、アンプ側シールド遮断、4m)
- ケーブル:モガミ2524、プラグ:ノイトリックNP2X-B(アンバランス構造、4m)
ベルデン8412の方はセミバランス構造の為ケーブルに指向性を持たせてあるので、判りやすい様にギター側のプラグにアルミテープで目印のラインを入れてみた。(写真手前)
また、稀に「ケーブルは印字方向に信号が流れる事を考慮して設計されているので、文字の頭側をギター側に使用する」といった趣旨の情報を目にする事があるが、これはメーカーがそう明言していない限りオカルトだと思っていいだろう。
ケーブルの設計上で明確な意図がない限り、一般的にはケーブルそのものに指向性はない筈だし、指向性があるものは何らかの形で信号の流れを示す表示がされているのが常識だからね。
なんで、特に指向性が明言されていないケーブルについては文字の方向に気を使う必要はないが、今回制作した8412の様にケーブル全体の構造上の理由で向きがあるものについては、信号の流れに合わせて文字の向きも揃えておくというのは「美しさ」や「拘り」という点では大事な事だと思うし、こうした細かい点においても愛情を持ってやりたいと思う。
という事で、一応文字の方向も気を使ってみた。(左がギター側、右がアンプ側)
こうしておけば、プラグに付けた目印が取れるなどして方向性が判らなくなった場合でも、文字の方向で判断する事が出来る。
さて、本題の音質に入ろう。
自作した際の記事では、ベルデン8412は明らかに「音が太い」と紹介したが、その後の感想として下記に特徴を挙げておく。
- 全体的に音が太くなり、特に低・中音域が太い。(太いという表現は分かりにくいので具体的に述べると、ここで言う「太い」とは「音量が増す」という感じで、アンプのボリュームを少し上げた様な感じ)
- 音にハリがある
上記の様に、音の太さとハリがある事に加え低中域が太い事から、フラットな音質と表現するには若干難しいと感じるが、その音質は音楽的で生々しく、何となくデジタルチックな線の細い類のものとは相反し、素性の良いとても魅力的なケーブルだと思う。
しかし、音質がフラットでなく特定の帯域に特徴の出やすいケーブルは意外と取扱いが難しい面があり、フラットな音質の環境で作った機材のセッティングが場合によってはバランスを崩してしまい、結果的に音質補正の必要性に迫られる事がある。しかも、良い方向に結果が出れば良いのだが、なかなか音像が決まらなかったり、求める音質と異なる傾向になった場合、かなり厄介な状況となってしまう。
太くてハリがあり音楽的な魅力を奏でるケーブルは確かに素晴らしいと思うが、結果的にそれが良いのか悪いのかは一概には言えず、やはり「使いどころ」をきちんと押さえておく事が大事だと改めて感じる結果となった。
ステージなどの現場で無駄なトラブルやセッティングに悩まされない様、自分が使用しているケーブルの特徴ぐらいはちゃんと把握しておく事をお勧めする。
ちなみに、ケーブルとプラグそれぞれの検証はやってないんで、プラグ自体の素性が音質に影響しているかどうかは定かではないが、プラグそのものが音質面においてもたらす影響力はそれ程大きくないと思っているので、プラグについては機会があれば検証したいと思う。
次にモガミ2524だが、これはズバリ良い意味で普通(笑)!
普通というとあまり良く聞こえないかもしれないが、要するに素直で変なクセがなく、非常に使いやすいという事。
特にどこかの帯域が目立ったり細かったりするという事もなく、比較的フラットに全域で安定した信号伝達を行っている感じがする。
ギター界はピュアオーディオの世界と違い必ずしも音質がフラットである必要はなく、プレイヤーが求める音に焦点をあてた音質であって良いと思うので、結果的に素晴らしいと感じる音を奏でる事ができて、その音を様々な環境でも出力できる安定したケーブルであれば最高の逸品だと思うのだが、やはり「特徴のある音質」を持つケーブルについては適材適所で使用の判断ができる事が望ましいと思う。
例えば、ギター → エフェクター → アンプ(ヘッド)→ キャビネットという信号の流れがあり、特にエフェクター以降は出来る限り機材の素性を100%活かしたいと考える場合、それぞれを接続するケーブルにはどんな特徴のものを使えば良いだろうか?
もちろん最終的な音に満足できれば本人にとってそれが最高の音であり、細かい事を気にする必要はない。
しかし、余程拘りがない人か偶然セッティングが決まった時以外は、エフェクターやアンプなどの機材上でイコライジング等の音質補正を施すのが一般的だと思う。
弾く環境や条件、弾き方が変われば同じ機材、同じセッティングでも音は変わるからね。
特に好みの音がはっきりしているプレイヤー程、思い通りの音がなかなか得られずツマミを何度もいじり直すケースは日常茶飯事ではないだろうか。
上手く結果が出れば良いのだがなかなか満足できる音が得られない場合、機材そのものではなく音を構成する全体的な環境を吟味するケースに迫られる。
つまり、ギターやアンプなどの個々の機材の他に、信号を伝達するケーブル類、ノイズ環境、電源環境、音響環境などなど、音が耳に届くまでのあらゆる諸条件で、今現在の音質に不満を感じる要因はどこが発しているのかをある程度判断する必要が出てくるのだが、これを踏まえずに単に機材側で表面上の音質補正を行ってしまうと、良い結果が出ないだけでなく逆にドツボにはまっていく可能性も高い。
まぁ、音響のプロじゃないんであまり神経質になる必要はないが、的を得た判断能力と対処力があるにこした事はない。
この様に考えると、本来フラットであって欲しい部分でフラットではない音が出ている、あるいはそれを認識していないといった状況はプレイヤーにとってかなりのデメリットだと言える。
なので、オーディオ界同様にフラットに拘る必要はなくともフラットの意義を理解し、必要に応じて使い分ける環境くらいは持っていたいと感じる。
こうした意味では、このモガミ2524辺りは基準のひとつとして位置づけるに相応しいケーブルではないだろうか。
自分の場合は、ギター →(ベルデン8412)→ 何らかの機材 →(モガミ2524またはカナレGS6)という感じで、ギターと8412をひとつのセットとして音を捉え、それ以降のケーブルは出来る限りケーブルで音質を変化させないという意図で使い分けている。
という事で、ケーブルのあれが良いとかこれが悪いではなく、目的の音を得る為にそれぞれの特徴を理解したうえで使いましょう、という話でした。